
黄梅院の茶室「昨夢軒」へと続くこの露地庭は、苔に包まれた柔らかな地面と、自然石の延段(のべだん)が静かに調和した空間です。
苔むした地面には季節の低木が控えめに植えられ、控えめながらも丁寧な手入れが施されています。
石段の先には、結界としての門がひっそりと構えられ、茶室へと至る道に「一歩一景」の精神が込められています。
この庭は、**歩くことで茶の湯の心構えを整えていく“導入の庭”**とも言えます。
静けさと自然への敬意が交わるこの空間は、千利休の美意識と、禅の精神が息づく場として見る者の心を静めてくれます。

🍵 茶庭と腰掛け待合の説明
茶室「昨夢軒」を前に広がるこの茶庭には、茶の湯の精神を伝える端正で控えめな美しさが宿っています。
足元には飛石が打たれ、正面には竹の結界と四つ目垣が設けられ、訪れる客をやさしく迎え入れます。
手前には、水音が響く蹲踞(つくばい)が設えられ、茶席へ入る前に心身を清める“所作”の場が設けられています。
右手には腰掛け待合があり、ここで客はひととき静かに待ち、茶の場に入る心を整えるのです。
苔むす地面と石灯籠、そしてあえて「何も足さない」この庭の構成には、
千利休の簡素の美学と、禅の“間”の思想が色濃く反映されています。

🪖 豊臣秀吉ゆかりの「破頭庭」と空池の説明
黄梅院の中庭に広がる「破頭庭(はとうてい)」は、戦国の武将・豊臣秀吉の寄進により造られたとされる枯山水庭園です。
庭の中央に配されたこの**舟形の“空池”**は、秀吉の軍旗「千成瓢箪(ひょうたん)」をかたどったものと伝わります。
かつて水をたたえていたであろうこの池は、今は水を湛えず、苔と土がその痕跡を静かに伝えています。
池の奥に架けられた小さな石橋、その周囲に組まれた石組は、
武の象徴と、禅の精神が一体となった重厚な空間を形づくっています。
そして、この池を囲むようにして咲く椿や沈黙する石灯籠は、
“戦の世の記憶”を苔とともに包み込み、静かな時の流れへと溶かしているかのようです。

☔ 直中庭の石組と雨に濡れる美(日本語)
黄梅院の中でもとりわけ目を引くのが、この直中庭(じきちゅうてい)に据えられた重厚な石組です。
庭全体が端正に整えられる中、中央に立つ立石(りっせき)群は、まるで精神の柱のように場の気を引き締めています。
この日は、突然の大雨。
石の表面が濡れ、黒く深みを増した質感があらわになると、石の輪郭が際立ち、苔や白砂とのコントラストが美しく浮かび上がりました。
乾いた日には見えない“もうひとつの表情”──それが雨の日の庭に宿る静かなドラマです。
松の枝越しに眺めるこの景色は、まさに**「無言の迫力」と「濡れた美」**が交差する、禅の一場面のようでもあります。

🌿 雨に濡れる椿とともに(締めの文章)
庭の片隅、まだ背の低い椿が静かに雨を受けていました。
苔の上にぽつり、ぽつりと落ちる雫(しずく)が、若葉を揺らしながら命の鼓動のように響きます。
この小さな椿も、時を重ねればやがて立派な樹となり、庭の景色をまた新たにしていくのでしょう。
雨の日の庭は静かで、そしてどこか優しい。
**濡れた石と苔、そして若き椿が織りなす風景は、まさに“禅の余韻”**そのものです。
この日の雨の黄梅院の様子は、映像としても記録しています。
しっとりとした音、濡れた石の光、そして苔の香りまで伝わるような一本になりました。
ぜひ、映像でもこの静けさをご体感ください。
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