桜の余香と陰陽の庭|京都・退蔵院が魅せる二つの枯山水の世界Sakura Reflections and the Yin-Yang Garden | Two Faces of Karesansui at Kyoto’s Taizo-in

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この写真は、退蔵院・余香苑の奥に広がる「流れの庭」。
水は実際には流れていませんが、石の配置や砂利の敷き方、植栽のラインによって、あたかも清らかな水が山から湧き出し、流れているように見せているんです。

黒っぽい丸石で構成された“石の流れ”は、あえて蛇行させることで自然味を表現。
そのまわりを囲むように配された赤石と低木が、水辺の情景を想起させます。

そして注目したいのが、この絶妙な“空白”の取り方。
余白の美を活かしながら、石・苔・砂・緑がそれぞれ主張しすぎず調和しています。

まるで、自然を凝縮したミニチュアの渓谷。
「見せる」ではなく「感じさせる」──これぞ中根金作の真骨頂です。

「陰の庭」は、白砂に黒砂を混ぜて描かれた静かな表情の枯山水庭園です。
この庭では、石と苔の島が点在し、まるで静かな水面に島々が浮かぶような風景が表現されています。

重厚感のある石組と、抑えた色合いの苔、そして丁寧に引かれた同心円の砂紋は、まるで波紋が広がる湖面を思わせます。
この庭が「陰」とされるのは、対をなす「陽の庭」に比べて落ち着いた陰影と内省的な美を宿しているからです。

中央の直立した立石は「精神の柱」とも言える存在感を放ち、
そのまわりに広がる静けさは、見る者の心を内側へと誘う禅の世界を映し出しています。

「陽の庭」は、明るい白砂を基調とした枯山水庭園で、静寂の中にも光と広がりを感じさせる構成が特徴です。
庭の中心には大ぶりな石が据えられ、それを囲むように柔らかな苔と流れるような砂紋が広がっています。

白砂の輝きは、まるで朝日の光を受けた水面のように明るく、
苔の緑と石の力強さが調和し、生命の躍動と調和の象徴として庭全体に「陽」の気を与えています。

陰の庭が内向きの静けさであれば、陽の庭は外へ向かう開放感を感じさせる存在。
見る者の心を穏やかに照らし、晴れやかな気持ちへと導いてくれます。

この庭もまた、中央に立つ紅しだれ桜のもとで陰と陽が対をなし、
自然の調和と、禅の世界観を視覚的に体現した空間となっています。

池泉回遊式庭園「余香苑(よこうえん)」には、季節ごとに異なる表情が宿ります。
ゆるやかな流れ、石と植栽の重なり、そして水面に映る空の色──
そのすべてが、訪れる人の心をふっとほどいてくれるようです。

奥へと続く流れは、どこか時間の先を思わせ、
庭を歩くたびに、過去と現在、そして未来までもつながっていくような感覚を与えてくれます。

禅の精神が息づく退蔵院。
そこに広がる庭は、ただ「美しい」だけではなく、
人の心に静かな灯りをともす場所なのかもしれません。

少しだけ、立ち止まってみたくなる。
そんな空間が、ここには確かにあります。

詳しくはYouTube 動画をご覧ください。

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